「 記録がなければ、記憶に残らない」……
高橋英彦(防災士/Bosai Plus 特約リポーター)
ダイナミックかつアクティブなアーカイブ化を
東日本大震災の実態やその教訓を後世に伝えるために震災の写真、映像、文書などの記録をアーカイブしようとする試みが多方面で行われているが、主要なアーカイブプロジェクトが一堂に会した東日本大震災国際合同シンポジウム「東日本大震災アーカイブの最前線と国境・世代を超えた挑戦」が1月11日、仙台市青葉区の仙台国際センターで行われた。このシンポジウムはハーバード大学、東北大学防災科学研究拠点、東北大学附属図書館、総務省が主催した。
この中でハーバード大学ライシャワー研究所のアンドリュー・ゴードン教授は「東日本大震災に関する情報を、いまそして将来のために集めることが大切だ。研究所でウエブサイトのアーカイブ化保存に経験があったので何か貢献できるのではないか。多くの情報はデジタルでしか存在しないが、電子化されたものの保存の仕組みは整備されていない。情報の保存と活用の仕方についていろんな課題がある。日本でも同じような考え方を持つ組織があり、国会図書館や東北大学などと提携できた。一緒に役割分担を考えながら、日本にとって世界にとって貢献できるアーカイブ化の意義を強く感じた」とダイナミックかつアクティブなアーカイブ化の必要性を強調した。
シンポジウムでは、東日本大震災アーカイブの最前線と題して国会図書館、総務省、企業、大学・研究所、被災地のメディア、岩手と宮城の県立図書館等15の機関からそれぞれの取り組みが報告された。このうち総務省の黒田泰平氏から東日本大震災アーカイブ基礎構築プロジェクトについて「国会図書館等と連携し、東日本大震災に関する記録をデジタルデータにより収集・保存・公開するためのルール作りを行う。ネット上に分散して存在する東日本大震災に関するデジタルデータを一元的に検索・活用できるソフトウエアを開発、被災地において震災関連デジタルアーカイブを構築、運用モデル実証を実施する」という国のプロジェクト計画が報告された。
東北大学防災科学拠点からは、アーカイブシステム「みちのく震録伝」について、今後10年間、震災と復興活動のデジタル記録や記憶を収集・保存し、公開することが紹介された。
このほか日本最大のポータルサイト、ヤフージャパンからは3月11日の前と後の映像記録を収集・公開する「東日本大震災写真保存プロジェクト」に3万3200点余りの投稿があり、公共機関等で活用されている事例が報告された。
また、特別講演「阪神・淡路大震災における神戸大学附属図書館 震災文庫の取り組み」で神戸大学の稲葉洋子氏は、かつての大震災の経験から「資料を収集する難しさを痛感した。知っていただく、使っていただくことが、継続して資料を提供していただくことにつながる。始めることより継続することが大変だ」と記録を残し保存することの重要さを訴えた。
仮設住宅に暮らす高齢者に向けた情報発信対策が急務
登壇者全員が参加してのパネルディスカッションでは、東日本大震災アーカイブの方向性について意見を交わした。コーディネーターを務めた東北大学災害制御研究センター長・今村文彦教授は「産官学15機関から活動を報告していただいた。それぞれの活動をいかに有機的に連携し、それを一つの目的に、日本、世界の再生に向けて結果を出すことになると思う」と述べ、さらに「それぞれの目的と役割が違う。それによって連携が深くなるのではないか。連携・共有化の第一歩になる。国境・世代を超えたとタイトルにあるように、多言語による言葉を超えた資料を集めていきたいと思っている。国境、境というものを考えると、被災地とそれ以外、またはそれを区別することなくアーカイブをつくるべきという言葉もいただいた。次の世代に伝わるものをつくりたい。実はデジタルアーカイブにアクセスできる方とできない方がいる。使えない方にどう発信するかが大きな課題である」と被災地の仮設住宅に暮らす多くの高齢者に向けた情報発信対策が急務であることを強調した。
資料の保存方法がデジタル時代に移った現在、いかにアーカイブ組織同士が協力・連携していくべきか、その重要性が確認されたシンポジウムとなったのではないか。報告の中で紹介された「記録がなければ、記憶に残らない」という言葉が印象的だった。
>>ハーバード大学「2011年東日本大震災デジタルアーカイブ」(日本語)
>>国立国会図書館「東日本大震災復興支援ページ」
>>総務省「東日本大震災関連情報」
>>Yahoo!JAPAN「東日本大震災写真保存プロジェクト」
>>311まるごとアーカイブス
>>みちのく震録伝
〈2012.01.23. by Bosai Plus〉