防災情報新聞
発行:防災情報機構 NPO法人 編集:防災情報新聞社
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(6)通電に成功したのは、発想の転換 保坂松男
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愛知県支部代表

保坂 松男
企業で電気設備の管理業務に長年
携わり、退職。現在は日本防災士会
監査委員、組織副委員長及び愛知
県支部代表を務めている

 ちょうど、この日は日中より雨が降っており零時を過ぎた頃に事故が発生し、呼び出しを受けました。現場に着いた頃は火焔と煙が立ち込め、常設の粉末消火器を使用するなど他工場の応援を得て、消火作業の真っ最中でした。

 消火後、復旧に取り掛かるのですが人員も資材も充分ではなかったので、夜中でしたが、まずは人員について数社の協力会社に要請をし、朝にはようやく作業の体制が整いました。資材も1社では賄えず(日頃、時間を見ては資材・電材、及び大型モーターなどの機器の納入会社に出向き、何をどの程度持っているかの情報は掴んでおりました)、数社にお願いして納入の手配を済ませて何とか朝には焼損部分の取り除きの作業が始まり、復旧に取りかかることが出来ました。

 復旧には多くの業者の方々の協力のもと昼夜兼行で5日を要し、その間、作業に携わる者は交替させましたが、私は不眠不休で指示を出しました。昼夜勤めますと気持ちの切り替えも出来ず、また一定の思考力が維持できないため、ちょうど自宅が会社から15分位の位置でしたので、朝の時間を見て一旦帰宅し、作業服を着替えて食事をして気持ちを入れ替え、現場に戻りました。

 私事ですが、帰宅して作業服を着替えたのには別の理由がありました。事故現場は消火に使われた消火器の粉末が散乱していました。私はアレルギー体質で消火粉を使用した場所に行くと体中が痒くなり赤く爛れてくるのです。

 電気室内は消火の際に消火粉が散布されており電気室全体が白くなってしまいました。室内の制御装置は大した汚れもなく良かったのですが開閉器盤(18面)の延焼防止のため消火器の粉末がかけられました。焼損したケーブル等の復旧と併せ、消火粉のかかった他の機器と開閉器盤内の消火粉の拭き取り作業を行ない、やっと試運転に漕ぎ付けました。

 試運転を開始しますと開閉器盤内の導体(銅板で幅200mm厚み10mm)の支えの絶縁物(ベークライト)の下から火花が発生し漏電、直ぐ遮断されてしまいました。よく見ると導体を支えている絶縁物の窪みと導体間の間隔が10mmと狭いため、手入れがよくできず、湿気を帯びているためで何回か拭き取っても通電が出来ません。

 その後、原因は消火粉にあることがわかりました。事故当日の夜は雨で湿気が多く、また消火粉は消火効果を高めるために四塩化炭素を含んでおり湿気分を吸収してしまうのです。いくら人力をかけて掃除をしても狭い導体部分には、隅々まで手が入らないため完全に除去することが出来ないことも分かりました。

 そこで、電気と水は相反していることは認識していたものの、あえて水による洗浄を行なうことにしました。洗浄後は念入りにエアーによって水の除去と扇風機による乾燥を行なったところ、数時間後には絶縁値も上がり無事通電が出来ました。

 あくまでも仮復旧でしたが工場の設備が稼働し、お客様に対しての納期遅れなく対応が出来ました。また、電気と水は、使い方によっては相容れることもわかりました。この教訓にもとづき、その後、電気室内の粉末消火器(ABC消火器とも言われています)をハロン消火器(ガスによる窒息消火式)に変更しました。

 その後、水に関するものとして、急激な設備の増強により電源を供給する第一鍛造変電所の屋外変圧器(14,500KVA)の負荷が100%を越えることがしばしば起こり、夏場の日中は変圧器の温度が手の触れることの出来ないくらいに上昇しました。

 変圧器は常時冷却をしているのですが、温度上昇に冷却が追いつかないため、これ以上の温度上昇は内部の絶縁油及び絶縁物の劣化となり大事故に結びつく可能性が予測されます。止むを得ず対策として、変圧器上と側面の周囲に水を常時散布し冷却して、何とか夏場の危機を乗り越えることが出来ました。

 毎日、変圧器の温度と負荷状況と睨めっこするため、本当に冷や汗もので夜も眠れない日が続きました。このようなことは電気に携わる者として大変恥ずかしいことであり、万一事故が発生していたら言い訳は出来ません、このことは前年には予測はしていましたので、その時点で説得して強引に予算を確保しなかった責任は免れません。

 翌年の5月の連休にはさらにパワーアップした変圧器(22,000KVA)に更新いたしました。過酷な使い方をした旧変圧器については、その後分解し、絶縁物及び絶縁油について劣化状況調査をいたしましたが全く異常はありませんでした。変圧器内は絶縁油を適確に管理していれば、ある程度の過負荷を超えた温度上昇の過酷な条件にも充分に耐えうることがわかり、大きな教訓となりました。

(つづく)

<2009.5.1.>
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